障害児福祉の所得制限がヤングケアラーを生み出す

障害児へのサービスや給付を「親の」所得により制限することの問題は何でしょうか?みなさんと一緒に考えたいとおもいます。
和田一郎 2024.02.29
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子育て支援政策の所得制限

“~「日本のラストチャンス」2030 年に向けて~”というスローガンのもとにはじまった異次元の少子化対策ですが(文献1)、子育て支援政策には異次元という名にそぐわない子どもへのサービスの所得制限が存在します。所得制限は児童手当だけではなく、勉強に関わる給食費や学費や奨学金だけでなく、医療や障害児福祉にも存在します。つまり所得制限は教育の機会や難病児・障害児の生活機能支援、親の経済負担・介護負担などに存在しています。

 “児童福祉法”や新たに出来た”こども基本法”の立法趣旨、そして”こどもまんなか”のこども家庭庁の理念から見れば、親の属性や住んでいる地域などで子どもが享受できるサービスが変化するのは子どもの視点から見て不適切です。なぜなら、子どもにとって変えようのない属性である親の所得において、個人として尊重すべき子どもの育ちが影響を受けるのならば、区別ではなく差別だからです。

この差別が大きく影響を与えているのが障害児福祉の領域です。障害児とその家庭を支援する様々な福祉サービスがあるのですが、その制度の多くは親の所得による所得制限により給付が減または負担が増額、もしくは適用外とされています。特に障害児福祉の給付制度は複数の制度が重層的に所得制限を設けており、それぞれの給付額も大きいため、条件によっては年収1200万円世帯の可処分所得が年収750万円世帯より低くなる非常に大きな所得の逆転現象が生じていることが明らかになっています(注1)。

障害児を育てる親の方々にインタビューをしましたが、ほぼ自己負担なしの公的支援により購入して使わなくなった補装具をネットオークションで販売し収入を得る見た目上の所得制限以下の家庭がいる一方、その補装具を高額な自己負担で購入し、子どもの成長にあわせて買い換える余裕もなく、子どもには床ずれなどが発生し、泣く泣くネットオークションで購入する見た目は所得制限以上である家庭がいるのです。

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このあとは

国家が見捨てつつある障害児を育てる家庭

最も厳しい状況なのが、障害児がいる家庭のヤングケアラー

国家の致命的な失敗

まとめ~あるエピソードから

・参考文献

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  • 国家が見捨てつつある障害児を育てる家庭
  • 最も厳しい状況なのが、障害児がいる家庭のヤングケアラー
  • 国家の致命的な失敗
  • まとめ~あるエピソードから
  • 参考文献

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