子どもへの体罰と「必要な制止」は何が違うのか?―子どもと現場の双方を守るために
はじめに
2019年6月、児童虐待防止法などの改正によって、親権者などが「しつけ」に際して体罰を加えてはならないことが法律に明記されました。この規定は2020年4月に施行されています(厚生労働省, 2020)。さらに、2022年の民法改正では、親権者の「懲戒権」に関する規定が削除されました。現在の民法第821条は、子どもの人格を尊重し、体罰など、子どもの健全な発達に有害な言動をしてはならないと定めています(法務省, 2022)。体罰を「しつけ」の名で正当化しないという原則は、法律上も明確になりました。
しかし、現場には難しい問いが残ります。施設職員に木の棒で殴りかかってきたのをよけて抱え込んだ、道路へ飛び出そうとする子どもの制止、他の子どもに殴りかかろうとする子どもの引き離し等です。いずれも、大人が子どもの身体に力を加えるという点では似ています。それでも、すべてを体罰と呼ぶことはできません。反対に、「安全のためだった」と説明すれば、どのような行為でも許されるわけではありません。
では、体罰と必要な制止は、どこで分かれるのでしょうか。昔はこれに類似した「児童虐待なのかしつけなのか児相ははっきりしろ!」と、親によく言われる文言をもとに、ロールプレイや面接技法の練習をしましたが、その根本には適切な境界というか線引きがあります。この線引きを誤ると、二つの問題が起きます。一つは、「必要だった」という言葉を口実に、体罰や乱暴な扱いが残ることです。もう一つは、必要最小限の介入まで避けられ、子どもや周囲の人、職員の安全が損なわれることです。本論では、個人を先に擁護したり断罪したりするのではなく、行為を判断する基準から考えます。
このあとは、
1.外見が似ていても、評価が分かれる二つの事例
2.体罰と身体的介入は、目的と方法の両方で分ける
3.必要な制止を、制度の内側に置く
4.諸外国が示す「禁止」と「手続き」の両立
5.非難だけでは、子どもも現場も守れない
6.判断を支える6つの条件
7.では、こういう時にどうすればいいか?
参考資料
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