数えられない子ども行政 ー児童手当誤支給から考える統計基盤の弱さー
1 また起きた、という問題意識
2026年4月20日、参議院「こども・子育て・若者活躍に関する特別委員会」で、児童手当をめぐる問題が取り上げられました。
産経新聞は同日、「自治体の2割が出国後の外国人に児童手当誤支給の経験 マイナンバーと出国情報連携で対処」と題する記事で、全1741市区町村の約2割で、2015年以降、住民票上の住所を日本国内に残したまま出国した外国人に対して児童手当を誤って支給した事例があったと報じています。同記事は、こども家庭庁の中村英正成育局長が、外国人に関する児童手当制度上の不適切事案について調査した結果として説明したものとしています。また、誤支給の件数や総額については「把握していない」と述べた、と報じています(産経新聞, 2026)。
児童手当は、こども・子育て政策の中核的な制度です。こども家庭庁の令和7年度予算案資料では、予算の主な増加要因として「児童手当の拡充(満年度化)」が2兆円1,66億円と示されています(こども家庭庁, 2024a)。したがって、誤支給の件数や総額を把握できていないという問題は、単なる事務処理上のミスではなく、子ども政策の統計基盤と行政管理の問題として捉える必要があります。
私は、2024年8月に「児童虐待対応件数はなぜ不明なのか? ―突きつけられる現実から―」というサポートメンバー限定記事で、児童福祉分野のデータが構造的に不安定であることを論じました(和田, 2024)。今回の児童手当問題は、その問題が別の制度領域でも表面化したものと見ることができます。
本稿では、児童手当の誤支給問題と、児童虐待対応件数をめぐる福祉行政報告例の問題を並べて、なぜ子ども行政のデータが不安定になりやすいのかを整理します。
この後は、
2 児童手当の国内居住要件と、出国情報の問題
3 児童虐待対応件数で何が起きたのか
4「十分に精査してください」だけでは統計の信頼は回復しない
5 こども家庭庁は何を「把握していない」のか
6 なぜ繰り返されるのか
7 まとめ
と続きます。ぜひサポートメンバーにご登録ください!