なぜ思春期女子が追いつめられるのか?ーエビデンスに基づきながら、神宮球場で起きたことを考える。
【趣旨】
2026年9月15日、東京の中高生3,171人を4年間追跡した研究が、「Nature Human Behaviour」に掲載されました(以下、「成田論文」)。これは研究デザインだけでなく、分析や解釈などすべてにおいて、この領域の研究者に参考になるものです。研究としても、インパクトファクター(IF)は17.5、もちろんこの雑誌はQ1(上位25%の論文)であり、トップレベルの若手の見本になるだけでなく(成田先生も十分若いですが)、私のような高齢研究者にとっても、まさに引導を渡されるような素晴らしい研究です。国の研究機関の研究者が入インパクトの研究を行う、そしてこのような研究こそ政策のエビデンスとして機能することが、わが国の最も必要な機能であり、もはや経験談と単純集計だけで政策が決まってしまう国の委員会とは一線を画す研究であることは間違いありません。
さて、この成田論文によると、16歳で抑うつ症状を示す割合は女子15.9%、男子8.2%であり、自殺念慮(死にたいと考えること)は女子29.8%、男子18.1%でした。この男女差の約3割から5割が、14歳時点の「孤独感」と「やせ願望」という2つの要因で説明できるという内容です。
そこで本論では、この成田論文をなるべく平易に説明します(あまりに一般向けすぎて専門的視点が欠如していることをお許しください)。そのうえで、論文掲載の前日に神宮球場で起きた出来事と結びつけて考察します。論点は「外見を金銭に換える市場を、子どもが集まる場所にどこまで持ち込んでよいのか」です。
【要約】忙しいあなたへ
一般的に子どもやメンタルヘルスの領域の研究で見られる研究は次の通りです。
①論文のプロトコルはいいのですが、リアルな現場の実感と異なっているのはなぜか?→現場の実情やそこから導ける知見などがなく、ただただ論文を量産する。論文を書いても現場の実践者が活用できないような、そして身内しか引用しないような研究論文であり、社会還元がない。
②現場はこうである、この様に困っている子どもたちがいる。→あなたの個人的感想ですよね。悲しい出来事を中心に社会にばらまき、自分たちの団体に補助金や寄付を集めようとしているだけですよね。そもそもあなたたちは実践してどれくらい成果を上げたのですか?研究も実践も税金が使わわれ亭るのだから感情的ではなく数値で表すべきでは?に答えられない。
それらと、今回の論文のどこが違うのか?
今回のこの論文の骨子は、16歳女子のメンタルヘルス悪化が、個人の性格や思春期のホルモンによるものではなく、「孤独になること」と「やせなければならないという社会的な圧力」に強く影響されていることです。そして、この2つの要因が研究者の理論だけではなく、当事者である若者たちとのワークショップから導き出された点です。若者たちは論文の共著者として名を連ねており、私はこれを「子どもアドボカシー(意見表明の支援)」が研究デザインに組み込まれた優れた事例として高く評価しました。
若者たちが指摘した「外見いじり」「SNSを通じた体型比較」「グループから外される恐怖」は、SNSというシステムの機能そのものです。外見を資本とする市場の価値基準が、毎日10代のスマートフォンの画面に流れ込んでいます。
ここで象徴的な出来ことが最近起こりました。
2026年9月14日に神宮球場で行われるヤクルト戦で予定されていた、「シャンパン ル・レーヴ・ブリヤンDayを企画」で始球式に元キャバ嬢を呼ぶと発表されていた企画です。これは、後述する推測にもありますが、当日に企画が中止となりました。本論文のエビデンスに反する、社会が認容していけない企画として今回は論じます。翌15日には、同じ六本木の高級キャバクラで働くトップキャストが、コカイン所持の現行犯で逮捕されました。職業に貴賤はありませんが、表と裏の境界は存在します。これらの論を述べた後、最後に、家庭や現場が取り組むべき具体策を提示します。
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- はじめに
- 1. 16歳の女子に何がおこっていたのか?
- 2. 「孤独」と「やせ願望」は、どこで作られるのか
- 3. ヤクルトスワローズは今回はアウト
- 4. 線引きは、もう溶けかけている
- おわりに
- 参考資料
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